はじめに
通信販売酒類小売業免許は、取得するとすべての酒が自動的に通信販売できるという免許ではありません。
どの商品を扱えるかは、酒税法の品目ごとに指定されます。
実務においては、私たちが日常的に使うお酒の呼び方と、酒税法で定められた正式な「品目」が、必ずしも一致しないケースがあることに注意が必要です。
例えば、「リキュール」や「スピリッツ」などは日常語と品目が一致しますが、「日本酒」は「清酒」、「ワイン」は「果実酒」といった具合に、法律上の正式な名前(品目)を正しく把握しなければ、免許申請は進められません。
仕入れ予定の商品が免許の範囲に入るかどうかは
ラベルの名称ではなく「品目」で判断されます。
この記事では、
酒税法の区分を具体例で理解できるよう整理しました。
本ページは、通信販売酒類小売業免許を取得する実務家向けに、酒税法上の品目区分の考え方を整理したものです。制度全体の前提については「通信販売酒類小売業免許の全体像」も併せてご確認ください。
まず知っておきたい「酒類の品目」ルール
酒税法の分類の考え方
酒類の区分(品目)は、一般的な呼び名ではなく、次の「4つの要素」の組み合わせによって決まります。
- 原料(何を使っているか)
- 製法(どうやって造っているか)
- アルコール度数(何度あるか)
- 添加物の有無(何を混ぜているか)
そして、これらの組み合わせによって、大きく次の「4つのグループ」に分類されます。
- 発泡性酒類(はっぽうせいしゅるい)
ビールや発泡酒など、泡立ち・発泡性を有するお酒。(例:ビール、発泡酒など) - 醸造酒類(じょうぞうしゅるい)
原料を酵母で発酵させて造るお酒。(例:清酒〈日本酒〉、果実酒〈ワイン・シードル〉など) - 蒸留酒類(じょうりゅうしゅるい)
発酵させた液体を加熱・蒸留し、アルコール分を濃縮して造るお酒。(例:焼酎、ウイスキー、ブランデー、ジンなど) - 混成酒類(こんせいしゅるい)
醸造酒や蒸留酒をベースに、糖類や香料などを加えて造るお酒。(例:リキュール、合成清酒、みりんなど)
一見すると同じように見えるお酒でも、使っている原料がわずかに違ったり、途中の工程で何かを加えたりするだけで、法的には全く別の「品目」として扱われます。
なお、品目区分の根拠法令は別表第一および酒税法(昭和29年法律第6号)e-Gov本文第三条第七号〜第二十三号に規定されています。
なぜ「品目」の理解が免許取得に直結するのか
「免許を取得した=すべてのお酒を売っていい」と必ずなるわけではないのが、この制度の難しいところです。
通信販売酒類小売業免許では、課税移出数量が一定以上の製造者が製造した酒類など、取り扱いに制限がかかる場合があります。
このとき、制限の対象かどうかを分けるのは、商品ジャンルや見た目ではなく、あくまで酒税法上の「品目」です。
つまり、 「これは日本酒か? ワインか?」 ではなく、裏ラベルに書かれているのが
- 清酒(日本酒) なのか
- 果実酒(ワイン) なのか
- リキュール(梅酒や缶サワー等) なのか
によって、取り扱い可否が大きく変わります。
課税移出数量による制限が存在するため、正確な品目特定は、免許取得の可否のみならず、その後のビジネスを大きく左右することになります。
ただし、品目の特定だけでは通信販売の可否は決まりません。国産酒は年間製造量3,000キロリットル未満の酒類製造者のものに限定されるため、扱う予定の酒類がこのルールに該当するかどうかは事前確認が必要です。詳細ルールは「3,000キロリットルルール解説」で整理しています。
酒税法における酒類の分類・品目と定義一覧
酒税法上、アルコール分1度以上の飲料は「酒類」と定義され、大きく4つの「種類」に分類された上で、それぞれの「品目」に細分化されます。
| 種類(分類) | 該当する品目・内訳 |
|---|---|
| 発泡性酒類 | ビール、発泡酒、その他の発泡性酒類(※1) |
| 醸造酒類(※2) | 清酒、果実酒、その他の醸造酒 |
| 蒸留酒類(※2) | 連続式蒸留焼酎、単式蒸留焼酎、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール、スピリッツ |
| 混成酒類(※2) | 合成清酒、みりん、甘味果実酒、リキュール、粉末酒、雑酒 |
※1 ビール及び発泡酒以外の酒類のうち、アルコール分が11度未満(令和8年9月30日までは10度未満)で発泡性を有するものが該当します。
※2 「その他の発泡性酒類」に該当するものは除かれます。
各品目の詳細定義(酒税法第3条第7号〜第23号)
仕入れ予定のお酒がどの品目に該当するか、申請前に必ずご確認ください。
| 品目 | 酒税法上の主な定義・条件 |
|---|---|
| 清酒 |
|
| 合成清酒 | アルコール、焼酎又は清酒とぶどう糖その他政令で定める物品を原料として製造した酒類で、その香味、色沢その他の性状が清酒に類似するもの(アルコール分16度未満でエキス分5度以上等) |
| 連続式蒸留焼酎 | アルコール含有物を連続式蒸留機により蒸留したもの(アルコール分36度未満) |
| 単式蒸留焼酎 | アルコール含有物を連続式蒸留機以外の蒸留機により蒸留したもの(アルコール分45度以下) |
| みりん | 米、米こうじに焼酎又はアルコールを加えてこしたもの(アルコール分15度未満でエキス分40度以上等) |
| ビール |
|
| 発泡酒 |
|
| 果実酒 |
|
| 甘味果実酒 | 果実酒に糖類又はブランデー等を混和したもの |
| ウイスキー | 発芽させた穀類及び水を原料として糖化させて発酵させたアルコール含有物を蒸留したもの |
| ブランデー |
|
| 原料用アルコール | アルコール含有物を蒸留したもの(アルコール分が45度を超えるもの) |
| その他の醸造酒 | 穀類、糖類等を原料として発酵させたもの(アルコール分20度未満でエキス分2度以上) |
| スピリッツ | 他のいずれの品目にも該当しない酒類で、エキス分が2度未満のもの |
| リキュール | 酒類と糖類等を原料とした酒類で、エキス分が2度以上のもの |
| 粉末酒 | 溶解してアルコール分1度以上の飲料とすることができる粉末状のもの |
| 雑酒 | 他のいずれの品目にも該当しない酒類 |
申請書の正式様式と記載例は、通信販売酒類小売業免許申請の手引(国税庁)に掲載されています。
酒類の全品目を具体例で解説
※本記事は理解のための整理であり、最終的な品目の判断は、必ず商品ラベルの品目表示(必要に応じて製造者への確認)により行ってください。
清酒(日本酒)
米・米こうじ・水を原料として発酵させた酒。
例
- 純米酒
- 吟醸酒
- 本醸造酒
- にごり酒
- スパークリング日本酒
一般的には、アルコール添加や発泡性の有無だけで直ちに別品目になるわけではありません(最終判断はラベルの品目表示によります)。
清酒は酒税法第三条第七号に定義される伝統的酒類で、原料・製造方法に厳格な規定があります。通信販売で清酒を扱いたい場合は、通信販売酒類小売業免許の申請条件を満たした上で、別途当該蔵元が「通信販売の対象となる酒類である旨の証明書」を発行できるかどうかの確認が必要です。
合成清酒
アルコールに糖類やアミノ酸などを加え、
清酒に似た風味に調整した酒。
例
- 清酒風味の低価格酒
- 業務用の清酒代替飲料
連続式蒸留焼酎(旧甲類)
複数回の蒸留により純度を高めた、
クセの少ない焼酎。
例
- サワーやカクテルベースとして多用される、すっきりした味わいの焼酎
単式蒸留焼酎(旧乙類/本格焼酎)
1回のみ蒸留し、原料の香りを残した焼酎。
例
- 芋焼酎
- 麦焼酎
- 米焼酎
- 黒糖焼酎
- 泡盛
ビール
麦芽比率が高く、認められた副原料のみを使用した発酵酒。
※詳細な定義(原料割合・副原料の範囲等)は酒税法上の定義によります。
例
- 一般的なビール(ラガー/エール等)
国産ビール大手4社は年間3,000キロリットルを大きく超えるため、通信販売酒類小売業免許では原則として扱えません。例外条件や輸入ビールの扱いについては「3,000キロリットルルールとは?」で詳しく解説しています。
発泡酒
麦芽比率が低い、またはビールに認められない副原料を使用したもの。
例
- 麦芽使用量が少ない発泡性酒
- ハーブ等を使用した発泡性酒
その他の醸造酒
清酒・ビール・果実酒以外の発酵酒。
例
- どぶろく
- マッコリ
- ミード(蜂蜜酒)
- 副原料を加えた新しい醸造酒
果実酒
果実を発酵させた酒。
例
- スティルワイン
- シードル(リンゴ)
- ペリー(洋梨)
果実酒にはワイン(ぶどう酒)、シードル、林檎酒などのフルーツワインが含まれます。ワイン・シードルをECサイトで販売したい場合は、品目区分の理解を踏まえたうえで「ワインのネット通販に必要な免許と取得手順」に進まれると実務上スムーズです。
甘味果実酒
果実酒にアルコールを加えて保存性・甘味を高めた酒。
例
- 酒精強化ワイン
- ヴェルモット
ウイスキー
穀物を糖化・発酵・蒸留・熟成させた酒。
例
- モルトウイスキー
- グレーンウイスキー
- ブレンデッドウイスキー
ブランデー
果実を蒸留し熟成させた酒。
例
- ぶどう等の果実を原料とする蒸留酒のうち、ブランデーに該当するもの
スピリッツ
蒸留酒のうち、焼酎・ウイスキー・ブランデー以外のもの。
例
- ジン
- ウォッカ
- ラム
- テキーラ
輸入ウイスキー・ブランデー・スピリッツ(ジン・ラム・テキーラ等)は通信販売酒類小売業免許で扱えますが、事業規模が大きくなり卸売を行う場合は「洋酒卸売・輸出入酒類卸売業免許」の取得も検討材料になります。
リキュール
酒類に糖類・果実・香草などを加えた酒。
例
- 梅酒
- 果実リキュール
- 薬草系リキュール
- 甘みのある缶チューハイ
リキュールは原料の自由度が高く、業務用から家庭用まで幅広い商材が含まれます。店舗・ECの両方でリキュールを扱う場合は、品目設計の前に「店舗販売とEC販売の同時取得パターン」を確認しておくと免許構成の検討漏れを防げます。
雑酒
他のいずれにも該当しない酒類。
例
- 灰持酒(赤酒)
- 本直し
注意
一般的な缶チューハイやサワーは“雑酒”ではなく、品目表示上『スピリッツ』または『リキュール』となることが多い(最終判断はラベルで確認)。
まとめ:お酒のビジネスは「品目」の特定から始まります
酒類販売の実務では、「見た目のイメージ」での分類は通用しません。すべては酒税法上の「正式な品目」で判断されます。
- 「ワイン」でもアルコール度数や製法によって「果実酒」か「甘味果実酒」か分かれます。
- 「チューハイ」でも糖類の有無や成分によって「リキュール」か「スピリッツ」か分かれます。
- 「梅酒」はたとえ焼酎で漬けていても、法律上の品目は「リキュール」になります。
「仕入れを予定している商品」や「今後取り扱いしたい商品」の正しい品目を確認すること。将来のビジネスプランと取得する免許の品目の範囲が一致しているか。 それらを確認することが、確実な免許取得とリスクのないビジネスプランを立てるための、重要な第一歩です。
「この商品はどの品目に該当するのか」「複数品目を扱う場合の書き分け」など、品目申請段階の個別論点は「酒販免許のよくある質問(FAQ)」で逆引きできます。最終的な申請フロー全体は「申請から免許交付までの流れ」で網羅しています。
みのり青山行政書士事務所 代表紹介
| 事務所名 | みのり青山行政書士事務所 |
|---|---|
| 代表者 |
大谷 賢司(特定行政書士/申請取次行政書士) 東京都行政書士会登録 第24081669号 |
| 役職・所属団体 | 東京都行政書士会渋谷支部 理事 |
| 学歴・保有資格 |
早稲田大学商学部、早稲田大学ビジネススクール(WBS)卒業 日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート 日本シードルマスター協会認定シードルアンバサダー |
| 主な実績・講演歴 | 2025年10月、2026年6月 渋谷区創業セミナー(特定創業支援等事業)にて東京都行政書士会渋谷支部代表として講師を担当 |
| 所在地 |
〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂一丁目15番3号 プリメーラ道玄坂329 |
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